のりりんの京都日和

京都府在住ののりりんの徒然ブログ

よいこの徒然草・第三十一・三十二段

noririn_06102011-06-01

第三十一段
雪がきれいに降り積もったある朝、わたしは用事があってある方のところに手紙を送りました。ところが、雪のことを何も書かずに送ったところ、返事に「あなたは今朝の雪についてわたしがどう感じたかお尋ねになりませんのね。そんなひねくれた方のおっしゃることにはとても耳を貸す気にはなりませんわ。あなたの性格には、わたくし、つくづく情けなくなりました」とあったのはおもしろいことでした。
この方が故人となった今となっては、こんなことも忘れがたい思い出です。

第三十二段
9月20日の頃、あるお方にお誘いいただいて、夜明けまで月見をして歩いた事がありました。そのお方が思い出したお宅があり、私に中の様子をたずねさせてからお入りになりました。雑草が生い茂る荒れ庭には夜露がわたり、香の薫りがごく自然に漂い、そんな中で家の主が表立たないように低く話している声が、とてもしみじみ趣深く感じられました。
ともに月見をしていたお方はやがて満足して外に出られましたが、私はこの家の女性の人柄はさぞ優雅だろうと思い、物陰からしばらく眺めていると、家人が戸を少し開けて、月を眺めている姿が目に入りました。客が去ったらそそくさと家の鍵を掛けて室内にこもってしまったとしたら、何か客人への配慮に欠けるように思えて残念なところですが、この方にはそのようなことがありませんでした。まさか帰ったはずの客がしばらくその場にとどまり、その後まで見ているとは知るよしもないはずです。これこそは日ごろからのこまやかな気遣いの賜物でしょう。
残念なことに、この家のお方もその後間もなく亡くなられたそうです。