のりりんの京都日和

京都府在住ののりりんの徒然ブログ

よいこの徒然草・第四十三、四十四段

第四十三段
晩春のころ、空がのどかに輝く季節のことです。上品そうな住まいで、奥深く木立も古く、庭に散る花なども見過ごすことができないほど見事だったので、入ってみたところ、南に面した格子は全て下ろされて何とももの寂しげです。東側に回ると妻戸に都合よく開いていた簾の破れ目からなかをのぞいたところ、容姿の美しい20歳ほどの男が、室内にくつろぎながら、奥ゆかしい落ち着いた様子で、机の上に文を広げて読んでいる姿がありました。
どういう方であったのか、誰かに尋ねてみればよかったと思います。

第四十四段
粗末な竹の網戸の中から外をみやると、とても若そうな男が、月影だけで色あいなどはよくわかりませんでしたが、美しくつやのある狩衣に濃い紫色の指貫姿で、大変風情があるようすです。小柄な少年を供に連れ、長々と続く田のあぜ道を稲葉の露に濡れながら分け進んで行きます。その人の吹く、言葉にできないほど美しい笛の音も、しみじみと聞き入る者もこんな所ではないでしょうに。そう思うとその人の行く先が知りたくなり、見送りながらついて行くと、笛を吹きやみ、山のふもとの大門がある立派な屋敷に入って行きました。
榻に立てかけた車の様子も、都でみるものより格段に目立つように思われます。召し使いに訊ねたところ「しかじかの宮さまがご滞在中ですから、おそらく法事などがあるのでございましょう」と言います。
なるほど御堂には法師が集まっています。春の夜風に漂いくる邸内の香の薫りも、身にしみる心地がします。寝殿から御堂へと向かう召使の女も、追って吹いてくる風が香るように香を焚いてたしなみよくしているところに、人影の少ない山里とは思えない気配りを感じます。
思うままに茂る庭の秋草は露に埋もれ、虫の音はうらみごとでもいうように、遣り水の音はのどやかに。雲の往き来も都の空より速いようで、月も見え隠れを定めることが難しいようです。

※「榻(しじ)」=牛車から牛を放したとき轅の端のくびきを支えておく四脚の台。

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ん〜、どうやら兼行法師はストーカーの素質があるようですw。
風流なものをみつけるととことん追いかけないときがすまない、と(^^;)