夜勤明け。
いつものように終業時刻から6分後の電車に急いで乗り込む。
いつもの通り、前から2両目。
乗った車両には大勢の修学旅行生と思しき学生。
ウチの坊主と同世代かな?
まあ、珍しくもなんともない。
ただ、座れないのがちょっと残念。
晴れの予報だったのにくもり空。
散策に行く予定にしてたけど、夜勤明けでムリして行く気にもなれないし。
あした改めて出かけよう。
というわけで、ヨメさまにキャンセルのメール。
そして、いつものように立ったまま本を開いて読み始める。
いくつか駅を過ぎたとき、目の前の女学生が立ち上がる。
「席、どうぞ。」
えええええ?
ボクは席を譲られる歳にみえるのかぁ???
「いえ、景色をみたいんで。」
よくみると、日本の学校の制服を着た外国人の少女だった(しかもかなりの美少女)。
流暢な日本語だったので気づくのが遅れた。
「席を譲られるような歳ではないので…」と改めて丁重にお断り。
空けてくれた席は空いたまま、同じ方向を向いて並んで立つことに。
ほかの学生たちは友達との会話に余念がない中、異国の少女は一生懸命車窓を眺めている。
思わず声をかける。
「そこにお城がみえますよ。」
「おお〜♪」
その直後、鉄橋。
今度は少女の方から話しかけてきた。
「この川は何という川ですか?」
「宇治川です。琵琶湖から大阪の海に流れる川ですよ。」
「おお〜♪」
無垢な好奇心をみせつけられて自分の中の「教えてあげたい虫」が暴れだすw。
「さっきのお城は豊臣秀吉が建てたお城で、お城を立てたときにこの宇治川とむかし池の底だったこのあたりを整備したんですよ。」
「今は池はすっかりなくなって田んぼばっかりになりました。」
ちょうど反対側の車窓から広大な巨椋池の干拓田がみえる。ナイスタイミング♪
「田んぼはお米を作っているのですね?」
「日本の景色は本当に美しいです。」
素直に感動してくれるのでこちらもとてもうれしい。
気になったのできいてみた。
「どこから来られたんですか?」
「埼玉です。もともとはシリアから来ました。」
聡明な少女はこちらの意図を先回りして両方こたえてくれた。
てっきり欧米の子だと思ってた。
シリア…
「シリアは今大変ですね。」
「はい。もう5年も大変な状態です。私は3年前に日本に来ました。」
「ボクは歴史を勉強してたのでシリアに行きたいとあこがれてたんです。ダマスカスとか…」
「ダマスカスもアレッポもいいところですよ。」
「シリアも美しいです…美しかったです。」
この返答に少し心を痛める。
「これからどこに行くんですか?奈良?」
「はい、興福寺に行きます。」
奈良に行く予定を取りやめた身としては、予定を元に戻してやっぱり行こうかなと思ってしまう。
でも、ついていくわけにもいかないしw。
「では、ボクはここで降りますんで、良い旅を。」
そう告げて電車を降りたのでありました。
何百回、何千回と飽きるほど見続けている通勤電車の車窓。
何気ない、いつもの日常に心ときめくひと時の出会い。
本当にありがとうございました☆