のりりんの京都日和

京都府在住ののりりんの徒然ブログ

よいこの徒然草・第二十三段

noririn_06102011-05-20

落ちぶれた末世といっても、皇居・宮中の神々しい有様は、世俗じみておらず美しいものです。
露台、朝餉、何殿、何門などは、その名だけでも美しくひびきます。貧しい家にもある小蔀、小板敷、高遣戸も美しいひびきです。「陣の座に夜の用意をせよ」と言うのも美しいです。夜のみかどの寝所に「火を灯せ、早く」などと言うのも、また耳に心地良くきこえます。上卿の、陣の座にて公事をなさる姿は当然として、部下たちが得意そうに慣れた手付きでそれを行う様子もみていておもしろいものです。とても寒い夜、彼らがそこかしこに眠り丸まっている光景もまたいいものです。「内侍所で女官が振る鈴の音は、まことに優美である」と、徳大寺の太政大臣がおっしゃっていました。

※「露台」=紫宸殿と仁寿殿の間にある板張りの所。
「朝餉(あさがれい)」=清涼殿の朝餉の間。朝夕、天皇が略式の食事をする所。
「何殿、何門」=内裏の殿社や門をまとめて言った。
「小蔀(こじとみ)」=清涼殿東南隅にある蔀の小窓。
「小板敷」=清涼殿内、小庭から殿上の間にあがるための板敷きの所。
「高遣戸」=清涼殿の、殿上人の出入り口。
「内侍所」=三種の神器のひとつ・鏡を奉安する温明殿。内侍司の女官が奉仕する。
「徳大寺の太政大臣」=藤原公孝。第十段の徳大寺大臣とは別人(後の人)。