一人明かりの下に書物を広げて、見知らぬ世界の人々を友とすることほど、心なごむことはありません。わたしの好きな本は『文選』の感動的なくだり、『白氏文集』『老子』『荘子』です。わが国の学者が書いたものでも、昔のものには感動させられることがたくさんあります。
※「文選」=中国南北朝時代、南朝梁の昭明太子によって編纂された詩文集。
「白子文集」=中国唐の白居易(白楽天)の詩文集。
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兼好法師だけでなく、江戸時代までの日本の王侯貴族の教養というと中国文学でした。
特に白居易というと、平安貴族に大変親しまれたようで『源氏物語』や『枕草子』にも引用されたりしています。
ボク個人的には思い出すのは『枕草子』の一節。
今回はボクが高校時代に「『枕草子』ってムカツク」と思ったその部分をご紹介します。
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枕草子 第二百九十九段(原文)
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて炭櫃に火をおこして、物語などして集りさぶらふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかなむ」と仰せらるれば、御格子をあげさせて、御簾を高くあげれば、笑わせ給ふ。
人々も、「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思いこそよらざりつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」といふ。
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内容は、要するに自慢話。
お姫さま(中宮定子)の謎かけに間髪入れずに応じたワタクシってスゴイでしょ?的な。
ヤな感じですw。
ここに出ている「香炉峰の雪」というのは白居易の詩の一節です。
上の『枕草子』の一節でもこの詩については清少納言だけでなく謎かけした中宮も、ほかの女房たちもこの文を引用した和歌が詠まれているのがわかるくらい知っているといっています。
『文選』『白子文集』が日本人に親しまれていたことを知ることができる場所が京都にあります。
それが詩仙堂です。
詩仙堂に掲げられている詩は中国南北朝〜唐代の漢詩です。
というわけで、こんなことを心の片隅に置きながらの京都散策というのはいかがでしょうか?