のりりんの京都日和

京都府在住ののりりんの徒然ブログ

よいこの徒然草・第五十四段

noririn_06102012-02-26

御室の御所にたいへん可愛らしい稚児がいました。この稚児をどうにかして誘い出そうとたくらんだ法師達は、演芸の達者な法師を仲間に引き入れて作戦を練ることにしました。意匠をこらした白木の弁当箱を作り、それを更に箱の中に丁寧にしまって、寺の南にある双岡の、これまた分かりやすいような場所に埋めて、その上に紅葉を散らして誰にも気づかれないように仕掛けを施しました。ここで法師達は御所に行って、稚児を誘い出すことに成功しました。
大喜びの法師たちは、あちらこちらと稚児を連れ歩き、そして、先ほど紅葉を散らした、苔が一面に生えている場所に並んで座って「いやあ、疲れたなあ」「この紅葉を焚いて酒の燗をつけてくれるような人はいないかな」「どれ、霊験あらたかな僧達よ、ちょっと念じてみてはくれないか」と言い合いました。僧達は打ち合わせ通りに箱を埋めた木の根に向かい、数珠を擦り、もっともらしく印を結んだりしながら大袈裟な動きで木の葉をそれとなくかきのけていきましたが、例の箱は一向に姿を現わしません。どうやら場所を間違えたらしいと、掘らない所はないくらいに山を掘りあさりましたが、結局見つけることは出来ませんでした。どうやら彼らが何やら隠しているところを見ていた者がおり、法師達が去った後に盗んでしまったのです。彼らはその場をとり繕う言葉もなく、挙句の果てには互いに口汚くののしり合いながら帰っていったのでした。
趣向を凝らすといっても、やりすぎるとかえって興ざめになってしまうものですね。

※「御室の御所」=仁和寺の、代々の門跡の法親王の御所。
 「双岡(ならびがおか)」=現京都市右京区御室双岡町。仁和寺の南に南北に連なる3つの丘陵地。

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またしても仁和寺のアホな坊さん列伝w。
何事も、過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし、ですね

写真は旧御室御所・仁和寺方丈前庭です。