第四段
常に来世に思いを馳せながら、御仏の道に精進するのが奥ゆかしい生き方です。
第五段
世に入れられない悲しみからよくよく考えもせずに急に思い立って出家したというのではなく、人知れず、門を閉じたまま、何に期待するということもなく日々を送っている。同じ世捨て人でもそういう世捨て人になりたいものです。
顕基の中納言は「無実の罪で流されたその場所から月を眺めていたい」とおっしゃったといいますが、まったくわたしも同感です。
※顕基の中納言=源顕基。藤原頼通(よりみち)の養子。後一条天皇に厚遇され、従三位権納言にすすむが、天皇の死により1036(長元9)年二君につかえずとして出家した。