のりりんの京都日和

京都府在住ののりりんの徒然ブログ

よいこの徒然草・第五十三段

noririn_06102012-02-09

これも仁和寺の法師のことですが、稚児が一人前の僧になる別れというので、寺をあげて宴会を開くことにしました。そのさなか、法師は酔っ払った勢いでそばにあった三つ足の釜を手に取り、頭にかぶろうとしました。しかしどうもつかえるようなので、鼻を押し込み、耳を押さえてまでして頭をねじ込み、皆の前で踊りはじめたところ場は大いに盛り上がりました。
しばらく踊った後のこと、法師は頭から釜を抜こうとしましたが、これがまるで抜けません。周りも宴会どころではなくなり、一同「これはどうしたものだろう」と途方に暮れてしまいました。あれやこれやと試してはみたものの、釜の口の部分がこすれて首の周りが傷つき、血が流れ、腫れ上がってしまったために、法師はすっかり息が詰まってしまいました。釜を叩き割ろうとしてもやすやすと割れず、それどころかガンガンと頭に響いてとても堪えらないので割ることができません。どうしようもなくなったので、頭に角が生えたようになってしまった釜の三つ足に衣服を掛けて、手を引き杖をつかせて、都の医者まで連れて行く事にしました。道中すれ違う誰もがそれをみて怪しがります。医者の家に入り、医者と三本角の者が向かい合って座るその様子はさぞかし奇怪なものであったことでしょう。ものを言っても、声がこもって釜の中に響いてしまい、外には聞こえてきません。「こんな症例はどこにも書いておらんし、これまでに聞いた事もない」と医者もさじを投げてしまったので、仕方なくそのまま仁和寺へと戻ってきました。親しい者や、法師の老いた母が枕元に集まっては泣き悲しみましたが、それが本人に聞こえているかどうかもわかりません。
その中である者が決断を下しました。「たとえ耳や鼻を切り失ったとしても、命がなくなることもないでしょう。とにかく力を込めて思いっきり引っぱりましょう」と言って、釜と首の間にわらを差し入れて釜の金属の部分が擦れないようにして、首がちぎれんばかりに引いたところ、耳と鼻をもぎ取られながらも、釜はどうにか抜けたのでありました。このような危険な命拾いをした後、法師はしばらくの間、病に伏していたそうです。

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前回に続き、仁和寺のアホな坊さん列伝w。
こんなくだらないことで耳と鼻を失ってしまうことのないよう、みなさんもお酒はほどほどにw。

※写真は仁和寺法堂の風景です。